オペラ「はだしのゲン」

中沢啓治氏による漫画「はだしのゲン」をもとにした、二幕六場の創作オペラ。上演時間約二時間。

主人公の少年ゲンが、広島の原爆で父や姉弟を失い、更に原爆投下当日に産まれた妹も失いながら、亡き父の言葉を胸に強くたくましく生き抜く姿を描く。台本は清水高範氏。

■ 台本

清水高範

■ 委嘱経緯等

広島国際芸術文化推進委員会の委嘱

■ 初演データ

  • 初演 1981
  • 場所 広島メルパルクホール
  • 主催 広島国際芸術文化推進委員会
  • 演出 粟国安彦
  • 指揮 井上一清
  • 演奏 広島交響楽団
  • 出演 紙谷加寿子(ゲン)他

■ その他の上演

  • 日時 1991.8.23 ~ 8.25
  • 場所 広島メルパルクホール
  • 主催 広島国際芸術文化推進委員会
  • 演出 中沢啓治
  • 指揮 井上一清
  • 演奏 広島交響楽団
  • 出演 紙谷加寿子(ゲン)、畑正恵、本宮寛子、湯山比呂子、佐藤征一郎 他
  • 日時 1991.9.4 ~ 9.6
  • 場所 昭和女子大学人見記念講堂
  • 以下、同上
  • 日時 2012.3.24 ~ 3.25
  • 場所 広島アステールプラザ・大ホール
  • 主催 野薔薇座
  • 総監督・演出 紙谷加寿子
  • 芸術監督 中沢啓治
  • 指揮 土屋一郎
  • 演奏 野薔薇座アンサンブル
  • 出演 紙谷加寿子(ゲン)小栗純一(大吉) 藤田真弓(君江) 他
  • 合唱 パパゲーナ・NHK文化センター 元美少年合唱団
  • 備考 オーケストラ部分はシンセサイザーを用いた縮小編成による

■ 関連曲

■ 楽譜

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■ 登場人物

  • 中岡ゲン:国民学校2年生の主人公。
  • 中岡大吉:ゲンの父で反戦思想の持ち主。このため、ゲンの一家は非国民扱いされている。原爆投下時に家の下敷きになり焼死。
  • 中岡君江:ゲンの母。末娘友子を身籠っており、原爆投下日に出産する。
  • 中岡浩二:ゲンの兄、中岡家長男。家族が非国民扱いされることに我慢出来ず、迫害をはねのけるため、海軍の予科練に自ら志願する。
  • 中岡英子:ゲンの姉。原爆投下時に家の下敷きになり焼死。
  • 中岡進次:ゲンの弟。原爆投下時に家の下敷きになり焼死。
  • 中岡昭:ゲンの兄、第一幕では疎開しており、原爆の難を逃れた。
  • 中岡友子:ゲンの妹。原爆投下後まもなく誕生するが、栄養失調と原爆症のために死亡。
  • 兵隊:熊本から救援のためにやってきた兵士。放射線量の高い地域で活動したため被曝して原爆症を煩い、ゲンに自らの昼食を与えて死ぬ。
  • 民吉:原爆スラムの住民。瀕死の春を元気づけるため、原爆で生き別れた春の娘の泰子の代わりとなる赤子を探し、友子をさらう。
  • :民吉の妻(中沢氏の原作では、民吉の娘であり、春の夫は原爆で死亡している)。原爆で、産まれたばかりの娘泰子と生き別れる。原爆症を煩っており、「死ぬ前に娘の泰子に会いたい」と願う。
  • 坊主:ゲンに読経を教える。
  • 医者:友子を診察した医者
  • スラムの住人、孤児:原爆で家を失った人々や孤児達。

■ あらすじ

第一幕第一場

鐘の音とともに《第一幕前奏曲》が始まる。場面は中岡家の畑の前で、収穫前の麦が実っている。ゲンと進次は、もうすぐ食べられるぞ、と心待ちにし、うどんやパンを作って食べると歌う(《わしらが育てた麦》)。

そこへ父の大吉が現れ、何度踏まれてもたくましく芽を伸ばす麦のように強くなれ、と子供達に諭す(冬に芽をふいた麦は、霜柱で根が持ち上がるのを避けるため、人の足で踏んで霜柱を倒す。このときに麦の芽も折れてしまうが、それでも枯れずに伸びていく強さになぞらえたもの)。大吉のアリア《麦の歌》が歌われる。

子供達はこの大吉の言葉を聞き飽きており、「また始まった!」と大吉をからかう。作業を一休みする間に、ゲンと進次は母の君江に「はらがへった」と訴える。君江は自分の分のサツマイモを子供達に与えようとするが、ゲンの姉英子はこの芋は母のお腹のなかの子供のための芋だからだめだと嗜める。君江は、食べたいさかりの息子達にお腹いっぱいに食べさせてやれない辛さを歌う(《食べたいさかりの子供達》)。

場面は代わり、ゲンは中岡家が周囲の大人達から非国民と呼ばれているのを知る。子供達も「ゲンの家は非国民」とはやし立てる。ゲンは大吉に「非国民というのはなんのこと」と尋ねるが、大吉は、放っておけ、戦争は日本が負けてまもなく終わる、と諭す(《非国民というのはなんのこと》)。

長男の浩二は、ついに弟達まで非国民の誹りを受けたことが我慢ならず、家族を守るために海軍に志願したことを大吉に告げる。大吉は、浩二の選択に怒り、「正しいことを主張して非国民と言われることがそんなに恥ずかしいのか」と嗜める。君江も戦争に行かせるためにお前を育てたのではない、と説得を試みるが、浩二は「国のため、中岡家のために戦争に行く」と家を飛び出してしまう(浩二のアリア《わしは戦争に行く》)。

浩二に対しては厳しい顔を見せた大吉だが、浩二が去ってしまった後は、「あの子は俺たちのために戦争に行ったのだ」と肩を落とし「どんなことを言われても、死ぬんじゃないぞ、生きて帰ってくれ」と歌う。君江も「早く平和になって欲しい」と歌う(大吉と君江の二重唱《早く平和に…》)。

第一幕第二場

1945年8月6日の朝。嵐の前の穏やかな朝を表す《間奏曲》の後、《今日は真っ青な空だ》とゲンが歌う。ゲンは進次に軍艦の模型を与えて登校する。進次は家の中で、軍艦で遊んでいる。

ゲンの姉英子は、庭の夾竹桃を見ている(英子のアリア《夾竹桃の歌》)。大吉も家の中で仕事を始め、君江はお腹の中で赤ちゃんが動いたことを告げる。

君江は洗濯物を干すため、家の外に出る。その直後轟音が轟き、舞台は暗転、暴風の音が吹き荒れる(《原爆投下》)。

舞台が明るくなり始めると、中岡家は倒壊し、大吉、英子、進次の三人が下敷きになっている。難を逃れた君江は、家に駈け戻ったゲンと共になんとか三人を助け出そうとするが、家はびくともしない。

やがて火事が起こり、進次がゲンに助けて、熱いよ、と訴える。大吉は覚悟を決め、君江にゲンとともにこの場から離れるように訴える。君江は「私もここで死ぬ」と抵抗するが、大吉はゲンに「お母さんを連れて逃げろ、麦のように強くなれ」と諭して、英子、進次と共に炎に巻かれて死ぬ(《逃げろ!お前達だけでも》)。

第一幕第三場

暗がりの中で、水を求める人々の声が聞こえる。人々の体は重度の火傷で皮膚が剥け、その剥けた皮膚が指の先や足首で止まってぼろくずのようにぶら下がっている(《水を下さい》)。

君江が産気づき、ゲンに出産のために必要なバケツと水、鋏、赤子をくるむ布を探してくるように頼む。

やがて、元気な赤子の声が響き、ゲンは妹が生まれた喜びを歌う(ゲンのアリア《生まれたぞ!》)。

生まれたばかりの赤子を抱いた君江は、ゲンに、戦争の本当の姿をしっかり見ておきなさい、二度と再び広島をこんな姿にしないで、と諭す(君江のアリア《お前が大きくなったら》)。

原爆投下から一週間が過ぎ、残留放射能による被曝で死ぬ人が現れ始めるが、市民はまだ残留放射能の危険を知らない。

友子は元気に生まれたが、君江は母乳が出ず、友子のために乳を貰いに行く。しかし、君江が尋ねた母親は、赤子を抱えたまま死んでいた。

一方、ゲンは元気なく座り込んでいる兵士に出会う。体調を気遣うゲンに、兵士は「髪の毛が抜けて来る」と告げる。

兵士は熊本から救援のため原爆投下後に広島入りしたが、死体の運搬を行ううちに被曝していた。兵士は食欲がないと言って、自分の持っていたカンパンをゲンに与える。被爆地で見た光景や、ゲンと同じくらいの年齢の息子が熊本で自分の帰りを待っていることを告げて、兵士は息絶える(《髪の毛が抜けてきた》)。

ゲンは驚き、自分の髪の毛も抜けてきていることに気づく。やがて自分も兵隊のように死ぬのだと予感したゲンは、死にたくない、と叫ぶ。

第二幕第一場

終戦直後の広島の闇市。スラムの住民によって、戦争は終わった、生きていくのはつらい、と合唱曲《戦争は終わった》が歌われる。

ゲンは元気のない友子を抱いて子守唄を歌っている(ゲンのアリア《ゲンの子守唄》)。そこへ坊主が通りかかり、その子はどこか悪いのか、と尋ねる。坊主は、妹の病気は「ピカドン(原爆)の毒」のせいだから、仏様におつかえすればきっとよくなる、とゲンに告げ、ゲンはお経を倣い始める(坊主のアリア《妹の病気はよくなる》)。友子を家において、坊主に付き添って方々の家で読経するうち、ゲンは原爆の後もピカドンの毒で人々が次々と死んでいることを知る。

老婆が一人、呆然とした様子で、満州へ行った息子達、原爆で死んだ家族のことを思い起こしながら、アリア《私の息子は》を歌う。

坊主はゲンの読経が上達したことを褒め、ゲンに別れを告げる。ゲンはお経が読めるようになったことを喜ぶが、疎開先から戻った兄の昭に友子が攫われたことを知らされる(《友子が攫われた》)。

第二幕第二場

ゲンは友子の行方を探している(《友子はどこに》)。やがて、民吉の家で友子をみつけるが、民吉は「これは泰子だ、友子じゃない」とゲンをはねつけ、スラムの仲間達と共にゲンを追い返す。友子はスラムの住民の希望として姫君扱いされていた(《俺たちのお姫様だ》)。

民吉は、友子と共に妻の春を見舞う。春は原爆症で死の床にあった。夫の攫って来た友子が娘の泰子だと信じて疑わない春は、友子を抱いて、私がこの子を抱くのもこれで最後、と子守唄を歌う。民吉は死ぬんじゃないぞ、と励ますが、春は子守唄を歌いながら息絶える(民吉と春の二重唱《もっと生きたい!》

春が息絶えると、民吉は、本物の泰子は原爆で死んだこと、春に対して嘘をついていたことを詫びる。そして、物陰から一部始終を見ていたゲンに《坊主、すまなかった》と詫びる。ゲンは民吉を許し、友子を連れて家に帰ろうとする。しかしその時、スラム街の男の一人が友子を抱き上げ、《この子はわしらのお姫様だ》と友子をゲンに渡すことを拒む。ゲンは友子を返してくれと訴えるが、スラム街の住人は友子が皆の希望であったことを訴えて返そうとしない。その時、友子が血を吐き、全員が騒然となる。

第三幕第三場

医者が呼ばれ、友子は診察を受けるが、医師は手遅れだと告げる。かけつけた君江もゲンと共になんとか助けてくれと頼むが、医師は私にもどうすることも出来ない、と告げる。やがて、友子が息を引き取る。

ゲンは、読経の礼で得たミルクを与えて、「お前が欲しがっていたミルクだ、お願いだから飲んでくれ」と歌う(《友子は息をしていない》)。

友子の死に打ちひしがれたゲンの前に、戦争から戻った浩二が麦の穂を差し出す(《麦の穂だ》)。ゲンは「戦争がくやしい、戦争が憎い」と戦争への怒りをぶつける(《わしは悔しい》)。浩二は、かつて家族で麦畑の世話をした思い出を語る。天国の大吉が、ゲンと浩二に向かって《麦の歌》を歌う。

亡き父の声に勇気づけられたゲンは、浩二に一度全て抜けたゲンの髪の毛がまた生えてきていることを教えられ、希望を取り戻す。浩二が父の《麦の歌》を歌い始めると、スラムの住人がそれに唱和する。

ゲンは、「友子の命はわしがもらった、とうちゃんやねえちゃんや、進次の命もわしがもらった」と歌う(《皆の命はわしがもらった》)。皆の命をもらって、麦のように強く生き抜く、と誓ったゲンは、「ピカドンなんかに負けるものか!」と叫ぶ。

群衆の合唱が頂点に達し、一度潮が引くように小さくなる。鐘の音と共に、ゲンの叫びが重なり、合唱はまたクレッシェンドしてフォルテシモで幕を閉じる。

■ その他

  • 原爆投下時の特殊効果音については、シンセサイザーを使用。初演時は被曝者の意見をもとに音を合成し、その音があまりに本物の原爆の音色に迫っていたため、広島では爆音に驚いて思わず会場で身を伏せた観客がいた、という逸話がある。
  • 初演時は最後の合唱はピアニシモのままで終わった。

日本語タイトル (ローマ字)
欧文名Opera "Barefoot Gen"
出版社Hoshina Music Office
原譜管理Hoshina Music Office
発表年1981
演奏時間2:00:00
難易度 (1~5)
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JASRAC作品コード158-2466-7